2021/10/18

Forty shades of green

 

色彩とは実際には連続的なものだから、数える必要もないのではあるが。アルファ館からのぞむ、SFCキャンパスの緑。

 

危機言語・少数言語・言語接触

標記分野は私の専門外である。が、「言語」の定義についての問題提起を授業で行うときに紹介する本がいくつかある。その都度本棚から引っ張り出してくるよりはということで、まとめて紹介。もちろん、網羅的なものではなく、たまたま自分の研究室にある本、それも日本語で出ているものに限って並べてみる。【2022年5月追記 下記の本はまとめてSFCメディアセンターに寄贈した。機会があればどうぞ手に取ってください】

金子享 1999『先住民族言語のために』草風館
 


ダニエル・ネトル & スザンヌ・ロメイン 2001『消えゆく言語たち』新曜社

 


宮岡伯人・崎山理編 2002『消滅の危機に瀕した世界の言語』明石書店
 


ニコラス・エヴァンス 2013『危機言語:言語の消滅でわれわれは何を失うのか』京都大学出版会
 


呉人徳治・呉人恵 2014『探検言語学:ことばの森に分け入る』北海道大学出版会



人によって意見の違いはあろうが、個別言語、とりわけ危機言語・少数言語のドキュメンテーション、ひいては言語の継承や復興に貢献することは、言語研究の中でも最も尊い作業である、と私は考える(フィールドワーカーに敬礼)。自分はその道に進まなかったが、博士論文の指導教授であったJames A. Matisoff氏(主査)、Johanna Nichols氏(学科外副査)は極めつきに優れたフィールドワーカーであり、もう一人の主査であったCharles J. Fillmore氏と並んで、最も尊敬する言語学者である。

 


 

言語の消失は生物種の絶滅にしばしばたとえられる。その一方で、新種の生物が発見されるのと同様、新たに「発見」される言語もある。

小馬徹 2019『ケニアのストリート言語、シェン語』(神奈川大学言語学研究叢書10)御茶の水書房


アフリカの多くの地域で共通語となっているスワヒリ語が、それ自体特定地域の集団の伝統言語でなく、一種のlingua francaとして成立したという話は聞いていたが、その変種がさらに元となって「国民(の一部)」のアイデンティティと結びつく「言語」が生まれる…というストーリーは非常に興味深い。まだ読み始めたばかりなので、紹介にズレがあったらご容赦。紹介せずにはいられなかったということで。

 


 

ダニエル・ロング 2018『小笠原諸島の混合言語の歴史と構造--日本元来の多文化共生社会で起きた言語接触』ひつじ書房

「日本に言語はいくつある?」という問いは、アイヌ語、朝鮮/韓国語、沖縄/琉球語、日本手話などを別にしても、「方言」の境界を考えると簡単な問いでないことがわかる。また、日本においても重層的な言語接触のケースはあり、本書はその貴重な研究となっている。

 

2021/10/17

言語類型論

堀江薫・秋田喜美・北野裕章 2021『言語類型論』開拓社

同社から出ている「最新言語学・英語学シリーズ」の第12巻。 このシリーズ、全22巻として企画されている。この種の企画は最終巻がなかなか出なかったり、途中の巻がなぜか遅れたりで、気がつくと完結までに10年を軽く越えて…などよくあるのだが、このシリーズに関しては堅調に出ている。目出度いことである。

 言語類型論という、裾野が広くなおかつ進展も速い分野の概説を書くことは容易ではないが、本書はこれまでの入門書で取り上げられてきたスタンダードなトピックと、著者たちの独自の貢献(堀江氏は日韓対照および従属構造の研究、秋田氏はオノマトペおよび移動表現、北野氏は談話から見た文法)と、両方のバランスのよくとれたものとなっている。

 

衣替え

 

うん、絡むのが君の仕事だからねw