2020/07/05

NICEな論文

他エントリーで紹介した、『認知言語学の羽ばたき』、その冒頭にある松本曜氏の文章の中に、論文を書く上で示唆的な部分があると紹介時に書いた。今は七月、ちょうど塾生諸氏も期末レポートにとりかかる時期でもあり、ここで紹介したい。

「良い論文とされるものには、4つ要素がある」(p. 4)と松本氏は説く。これらの要素とはN=new(新しい知見), I=integrated(まとまり、一貫性), C=clear(明晰さ), E=empirical(経験科学としての妥当性)、頭文字をとってNICEになるという次第。とても分かりやすいアドバイスである。

多少補足すれば、新しさというのは多分に相対的なものである。学生のレポートでも、まずは自分にとって新鮮に感じられる事柄を報告してほしい。もちろん、新発見だと思ったことが、さらに調べたらよく知られていることだった、ということは誰にでもある。先行研究にあたる理由は、研究のアイデアを得るためだけでなく、自分の考えがどのくらい新しいかを確かめるためでもある。同時に、自分が提示する事柄には客観性の保証が求められることも念頭に置いてほしい。「自分がそう思ったから」では弱いので、複数人への聞き取りやアンケート、コーパス利用による数値的な偏りの認定、翻訳を利用した対照言語分析、条件をコントロールした実験(アンケート調査も設定次第では実験と同じ)などを採り入れることができれば素晴らしい。

それでは皆様、Have a NICE weekend!