2021/12/31

構文と主観性

天野みどり・早瀬尚子(編)2021『構文と主観性』くろしお出版

本書は同編者による『構文の意味と広がり』(2017)の続編と言える(こちらもおすすめ)。題名のとおり、どちらも第一線の研究者による構文研究を集めたものである。一つの枠組みを厳密に前提としてはいないが、「形式と意味の慣習的なペア」として構文を見るという点では共通している。余談ながら、天野氏は日本語学、早瀬氏は英語学が本来の専門で、本書は二つの研究伝統の交流を見せてくれる。

 


認知・機能言語学、特に英語学と日本語学の分野で、良質なケーススタディーを読みたい向きにはとりわけすすめたい。学部のゼミや大学院で毎回一編ずつ取り上げてディスカッションとか良さげだ。

なお本書の「隠しテーマ」の一つは(いや、隠れてもいないかw)、文法化あるいはより広く機能拡張である。個人的には小柳氏、青木氏の論考が収録されているのは嬉しい。この方面に関心をもつ人はとりわけ本書の所収論文に新鮮な発見の喜びを見出すことだろう。

それでは皆様、どうかよいお年を。