2020/05/13

星に住む人びと

暇つぶしの読書に、松井孝典『宇宙人としての生き方 アストロバイオロジーへの招待』(2003, 岩波新書)という本を読んでいた。



そのとき不意に、樹村みのりのマンガ作品を思い出した。この記事の題名がそれ。このお方、長いものを描かないし、アニメ化された作品もなし(たぶん)、絵柄も地味なので、花の24年組にしてはやや知名度が低い。シブイ目の作品が多いのだが、とても好きな作家である。最近もアマゾン明神のご宣託により、あれこれポチッとな、またポチッとな、と彼女の作品を少しずつそろえている。

「星に住む人びと」は、少女マンガ誌初出時にたまたま読んでいたく感動して、その部分を切り取って簡易製本して保存してあったほど。しかし引っ越しを重ねたりするうちに行方知れず。その後、長い間作品の要所だけは頭の中にずっと残っていて、ときどき脳内でリプレイしていたのだった。古本の情報もよく見るとあったが、2800円はさすがに高い。彩色豪華特別本とかで出ないかな。大人が読めるすばらしい絵本になりそう。



...というようなことを某SNSに書いたわずか数週間後。おぉぉっ!!と咆えてしまった。いやー、インターネット恐るべし。何とはなしに「星に住む人びと」でグーグルしてみたら、樹村みのり作品のリストを上げているサイトがヒットした。まあ、そこまでは想定内。しかし、偶然にも「再録情報」に出くわした!

『ネムキ2月号増刊 夢幻館』。それも今年。あわててアマゾンで検索したものの、マンガ雑誌の増刊号というと、うまくヒットしない。マンガだけあって、少し前の号などはとっくに品切れ(つーか、すぐに裁断だわな)になっている。

そこで、あわてて大学の生協に駆けつけて、取り寄せ依頼した。それが今日、届いたというしだい。

「フィールド・オブ・ドリームス」という映画だったか、願えば夢はかなうもの、というやつですか。いや、それとも「言霊」つーか、口に出したものは実体化するというやつですか。はたまたシンクロニシティか。何とも驚きなのだった。おまけに、再録情報を知ったサイトでは、よく読み込んでおられる方が紹介をされていて、今回のは実は再録ではなく全面描き直しだとか。30年も前の作品を地道に書き直す樹村氏もすごいアーチスト魂だが、再検証する読者もすごい。

というわけで、何とも夢のような話であった。まだパラパラめくっただけだけど、しっかり今晩は読むことにしよう。

最後のほうに出てくる、「ぼくたちは地球星人ですね」、「そう 宇宙人なんです」というやりとり、やっぱ泣けるわ。

平成生まれがもうすぐ成人になる今どき、1970年代だのベトナム戦争だのはもう思いっきり時代劇の世界。その頃に20才前後という設定だった主人公の親世代の太平洋戦争にまつわる思い出となると、世界観からして「学習」しないとだめなんじゃないか。中身の紹介はしないが、人生の一瞬の断面と、何十年という長いパースが交錯する描き方って、すごく好みなんだよな。

ちなみに、再録情報を拾わせていただいたソースは、neko's Pageというサイト様。こんな日記がお目にとまることもないにせよ、ここで深々と御礼申し上げます。

さらにその後、コミックスに収録されたことを知り、さらにポチッと。それが作品集『見送りの後で』(朝日新聞出版)。表題作もまんまの内容で、こっちが送られる日もさほど遠くないのーと思うと、しみじみしてしまう。

(初出:April & May 2007)