~福澤諭吉とともに日本の近代化に尽くした医師~
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Toshio Ohori / Emeritus, Univ. of Tokyo
2025/12/14
「丸善」を創った男 早矢仕有的資料展
2025/12/01
2025/11/28
落下の王国
期待とともに劇場への道すがら、何とはなしに、ツェッペリンはリフ中心の構造の美だとすると、クラシックならベートーベン?(パープルはバッハだし)などと与太なことを考えていたら到着。やはり第七はヘビーメタルよの、と思ううちに開幕。
なんと冒頭、劇伴が第七の第二楽章。シンクロニシティここにあり。こんなことはめったにない。作品に引き込まれる、というより自分から全力で助走つけてダイブした感じ。素晴らしい作品だった。映像が奥深く美しい。劇場は祝日にてほぼ満員だった。
なおエンドロールでオケの演奏はブルガリアの楽団ということを確認した。菅野よう子作品でもよく起用されているし、サントラづいてるのかな。
2025/11/23
イマジナリー教授
最近の暮らしについてご報告。端的に言えば、自分がキッズだった頃に想像していた、あるいは自分が習った先生方から断片的に聞いた昔話の世界にいるような、想像上の生き物としての「大学教授」にちょっと似た生活をしている。
具体的には、通常の授業は週2つ、プラス院のセミナーが1つ。出勤は週2日。会議やその他の雑務(という名の本務)は全くなし。授業はほぼ自分の専門の話のみ。あとは専門・趣味を問わず本を読んだりブラブラ散歩をしたり、そしてものを書いたり。要するにマイペースでやっているということで。
もっともビジュアル的には、和服も着ないし髭もないし、風呂敷で通勤するでもなし、古のイマジナリー教授にはなっていない。和服は一応持っているが慣れないものを着て転ぶのも怖いw ここは帽子とマントで出かけるべきか。それだと同じイマジナリーでも怪人になりそうではあるが。
画像はこの夏に神戸のRRG学会に行った時に立ち寄った海洋博物館併設のカワサキワールドで展示されていたビンテージ扇風機。イマジナリー教授にはお似合いかも。
2025/07/25
SFC研究会(アーカイブ)
【2025年3月の定年退職に伴い、研究会は閉店しました。認知・機能言語学の入門者向けの情報ソースとして残しておきます】
ようこそ、言語科学の研究会へ! 言語研究の参考となるような情報は、随時Tidbitsタグをつけてここのサイトに公開していきます。また、認知言語学関連のメタリンクも用意しました。卒業プロジェクトに取り組んでいる人、これからテーマを探して深める人、それぞれだと思われるので、進度に合わせて授業時間を有効活用したいと思います。
- 「構文研究メモ」を公開しました。このメモで取り上げているようなことを研究会では行います。研究会に新規加入の際は、春学期で取り組む構文に当たりをつけておくとより楽しく研究できると思います。
- 日本では優れた「語法研究」の伝統があります。今日私たちが非常に優れた、情報量の多い辞書が利用できるのも、英語参考書などで語法の細かい使い分けについて丁寧な解説がされるのも、この分野の先人のお陰です。その集大成が、『英語語法大辞典』第1-4集, 大修館書店。語学好きならぜひ現物を手にとってください。また、個人による語法研究の本もたくさん出ています。とりあえず、私の本棚にあるものをいくつか紹介。
- 英語語法研究といえば、洞察の鋭さと用例の周到さにおいて最高位にあるのがこの一冊(残念ながら絶版だが図書館にはある)。
- 郡司隆男・西垣内泰介(編)(2004)『ことばの科学ハンドブック』研究社
- 佐久間淳一・町田健・加藤重広(2004)『言語学入門:これから始める人のための入門書』研究社
- 大津由紀雄(編)(2009)『はじめて学ぶ言語学:ことばの世界をさぐる17章』ミネルヴァ書房
- 斎藤純男(2010)『言語学入門』三省堂
- 窪薗晴夫(編)(2019)『よくわかる言語学』ミネルヴァ書房
- 斎藤純男・田口善久・西村義樹(2015)『明解言語学辞典』三省堂
- 西村義樹・野矢茂樹(2013)『言語学の教室』中央公論新社
- 大堀壽夫(2002)『認知言語学』東京大学出版会
- 籾山洋介(2014)『日本語研究のための認知言語学』研究社
- 野村益寛(2014)『ファンダメンタル認知言語学』ひつじ書房
- 池上嘉彦・河上誓作・山梨正明(監修)シリーズ認知言語学入門
- 辻幸夫(編)(2003)『認知言語学への招待』シリーズ認知言語学入門1 大修館
- 吉村公宏(編)(2003)『認知音韻・形態論』シリーズ認知言語学入門2 大修館
- 西村義樹(編)(2018)『認知文法論1』シリーズ認知言語学入門3 大修館
- 中村芳久(編)(2004)『認知文法論2』シリーズ認知言語学入門4 大修館
- 松本曜(編)(2003)『認知意味論』シリーズ認知言語学入門5 大修館
- 大堀壽夫(編)(2004)『認知コミュニケーション論』シリーズ認知言語学入門6 大修館
- 中本敬子・李在鎬(編) (2011)『認知言語学研究の方法:内省・コーパス・実験』ひつじ書房
- 辻幸夫(編)(2013)『新編認知言語学キーワード事典』研究社
- 辻幸夫他(編)(2019)『認知言語学大事典』朝倉書店
- 加藤重広・澤田淳(編)2020『はじめての語用論−−基礎から応用まで』 研究社
- 加藤重広・滝浦真人(編)2016『語用論研究法ガイドブック』ひつじ書房
- 小山亘. 2012『コミュニケーション論のまなざし』三元社
- 大橋理枝・根橋玲子. 2019『コミュニケーション学入門』放送大学
4)研究計画の立て方やデータ分析の方法について解説した本も読んでおくとよいでしょう。上に挙げた中本敬子・李在鎬(編) (2011)『認知言語学研究の方法』の他にいくつか紹介します。藤村・滝沢は全般にわたる解説、坊農・高梨は会話の分析を中心にしたものです。Wray & Bloomerはテーマ探しから始めて(言語研究の各分野の紹介つき)、データ集めと分析、さらには研究の発表のまとめ方まで親切に解説しています。Litosselitiは言語研究のさまざまな方法論(質的、量的、聞き取り調査、コーパス分析、等)を紹介したものです。自分が使いたい方法について詳しく学ぶのに役立ちます。Hatch & Lazaratonは新版が出ていないのが残念ですが、基礎的な統計的分析の方法を広く扱っています。これも自分の目的に合った方法を解説した部分を選んで読むとよいです。
- 藤村逸子・滝沢直宏 (編) (2011) 『言語研究の技法』. ひつじ書房.
- 坊農真弓・高梨克也 (編) (2009) 『多人数インタラクションの分析方法』. オーム社.
- Wray, A. & A. Bloomer (2012, 3rd ed.) Projects in Linguistics and Language Studies. London: Routledge.
- Litosseliti, Lia (ed.) (2018, 2nd ed.) Research Methods in Linguistics. London: Bloomsbury.
- Hatch, E. & A. Lazaraton (1991) The Research Manual: Design and Statistics for Applied Linguistics. NY: Newbury House
5)論文の書式について。さまざまな学会で「投稿規定」の一部として論文の書式=style sheetを決めているので、一つのスタイルに決めて、それに従うこと。例えば英語だと日本英語学会の投稿規定ページは詳しい規定があります(最下部にサンプルのpdfファイルあり)。海外ではAmerican Psychological AssociationやModern Language Associatonのstyle sheetがよく知られています。どちらも正式のガイドブックは有料ですが、ネット上では簡略化した紹介があるので各自で参照することをすすめます。日本語でも多くの学会が公式サイトにスタイルシートを載せています。自分で関心をもった研究がよく出てくる学会のスタイルシートを使うとよいでしょう。出版社の中には自社仕様のものを用意しているところがあります。ひつじ書房の執筆要項はその一つ。もちろん、卒業論文は表紙がついたり、大学固有の規定もあるので、それは各自で確認してください。
本研究会では、これまで次の卒業プロジェクトが提出されています。
- 若者言葉における重複表現について
- 美術への専門性が絵画作品への言及にもたらす影響
- SNSにおける『界隈』に対する考察~オンラインコミュニティとしての観点・認知言語学の観点から~
- フレーム意味論に基づく「オタク」の意味分析--「オタク」の意味拡張に関する考察[優秀卒業プロジェクト]
- 身体醜形概念と(幼少期の)親子関係の関連
- 身体を使ったイディオムと身体論の関係性について
- 映画キャッチコピーにおける句読点使用の変化と背景考察
- 在日外国人が漢字に興味を持つ理由を明らかにする
- 言葉の力から見る『KEIO日本一』
- インスタグラム広告における「いいね」獲得方法
- 化粧品におけるカラーネーム考察〜認知言語学的視点から〜
- SNS 言論が携帯業界の企業活動に与える社会的影響に関する分析
- 多義語における意味拡張を理解することによる記憶定着への影響とそこから考える日本の英語教育
- On the Multimodality of English [ADV and ADV] Construction: A Collostructional Approach[優秀卒業プロジェクト]
- インターネットスラングの認知言語学的考察〜「親ガチャ」を例に〜
- 日本語におけるコロナウイルスに対する戦争メタファー
- 『不思議の国のアリス』からみる翻訳の日英比較--オノマトペを中心に翻訳者が作品に与える影響について
- 日本語を第二言語とする日本語使用者の口語特徴の考察
- バナー広告におけるインプレッション効果を 促進する視覚情報と言語表現のシナジー効果
- インスタグラムにおけるキャプションの影響力〜認知言語学的観点からインスタグラムを紐解く〜
- 比喩表現における日米言語の比較
- 本当に新型コロナウィルスは日本国内で終息を迎えるのか? 〜Twitter を用いたウィズコロナの動向分析〜
- 多義語のパラドックスに関する考察−認知言語学の視点から− [優秀卒業プロジェクト]
- スポーツの場におけるミスコミュニケーションの分析
- チームスポーツにおけるコミュニケーション−−複雑なミスの発生要因の分析と解消の考察−−
- デザインプロセスにおける言葉の役割と創造性について
- プロとアマチュア記者の記事にはどのような言語学的な違いがあるのか・良い記事にはどのような特徴があるのか
- 現代版弁論術のすすめ−−人を説得するための技術−−
- 言語学的観点から見た漫才のツッコミ
- 動物キャラクターのステレオタイプと役割語を検証−−アニメーション映画「バケモノの子」を用いて−−
- 反復練習による、役者の演技の変化について
- 漫画における感情表現の日・英翻訳比較研究
- 歴代「角川短歌賞」受賞作にみる現代短歌と家族観
- SNSコミュニケーションによる引きこもりのストレス緩和について
- イタリア映画の日本字幕における技法とコツとは
- ノンバーバルコミュニケーションにおける「間」の感性情報心理学・周辺言語
- 人が表情を読み取るとき、文字と音声情報はどのような影響を与えるのか
- 認知言語学×スポーツ
- 漫画『One Piece』におけるキャラクターを 生かす工夫と作品に与える影響(日英比較)
- 名詞表現の語彙概念拡張に関する考察
2018年度
- 人間が音楽構成と詞へ与える効果の分析−−ピンク・フロイドの軌跡と音楽−−
2025/03/15
最終講義
大堀壽夫(慶應義塾大学環境情報学部教授)最終講義
"Cx-conの構造:Construction Grammar, Role and Reference Grammar, 及び記号論的機能"
1 日時:2025年3月18日
14:00~ 受付 14:30~ 講義
2 場所:慶應義塾大学日吉キャンパス「来往舎」1F シンポジウム・スペース
〒223-8521 神奈川県横浜市港北区日吉4-1-1
(東急東横線、東急目黒線、東急新横浜線/横浜市営地下鉄グリーンラインから徒歩1分)
交通アクセス・キャンパスマップ:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/hiyoshi.html
3 退職記念パーティー 【受付締め切りました】
同日17:00~19:00
場所:慶應義塾大学日吉キャンパス「来往舎」1F ファカルティ・ラウンジ
2024/09/24
東京言語研究所 理論言語学講座(後期)
2024年度理論言語学講座(後期)についてご案内:
受講期間 10月7日(月)~10週間 19:00~20:40(各講座100分)
※祝祭日は開講しません
課目 【講義概要は研究所ホームページをご覧ください】
月曜: 日本語文法理論Ⅲ 川村大(東京外国語大学教授)
火曜: 語用論 松井智子(中央大学教授)
生成文法Ⅱ 高野祐二(金城学院大学教授)
水曜: 意味論の基礎 酒井智宏(早稲田大学教授)
木曜: 言語学概論 長屋尚典(東京大学准教授)他4名(各講師が2週ずつ担当)
語形成と語彙の意味 由本陽子(大阪大学名誉教授)
金曜: 英語史概論 堀田隆一(慶應義塾大学教授)
言語哲学 峯島宏次(慶應義塾大学准教授)
講義形式: ZOOMによるオンライン講義 ※ZOOMはリアルタイムのみの配信です
受講料:1課目 25,000円(税込)※学生半額
お申込み https://www.tokyo-gengo.gr.jp/
申込受付期間 9月30日(月)10:00AMまで
【来年(2025年度)は私も担当予定です。年明けに詳細が公開されると思います】
2024/08/27
ICCG 13 in Göteborg
Slides of the talk "Constructional change of English regardless (of): From a complex preposition to a free-standing discourse marker" (Aug. 27) are now downloadable.
2024/08/07
構文理論 基礎から応用へ
Hilpert, Martin (2019, 2nd. ed.) Construction Grammar and its Application to English. 邦訳. 開拓社.
9月に出ます。しばしお待ちを。 日本認知言語学会でお披露目となりました。
書店にも出ました。大学生協にも入れてもらう予定です。
2024/08/04
オリンピックの風景
東京五輪の時も垂れ幕が出たが、今回も。
つぶさにTVを見ているわけではないが、活躍の報が伝わってくる。健闘に拍手。
今回は馬術競技で92年ぶりのメダル、戦前の西選手以来、というニュースを見て、ああ、バロン西!と突然思い至った。8月のこの時期は戦争関連の記事やTV番組もあり、その連想もある。バロン西つながりで言うと、栗林中将が松代と縁が深い人だということをこの本で知り、硫黄島…地下壕…松代大本営…と断片的知識が符合した時はうはっ、と思わず声をもらした。
五輪で注目を浴びた人は多いが、個人的には五種競技で初のメダルの佐藤選手に特に拍手喝采したい。要求されるスキルの全く違う種目で優れた数字を出すというのは、論理的に考えてアスリートの頂点。「論理的」というのは古代ギリシャの精神だしね。いつぞやの五輪で(調べたら1984年ロスアンジェルスだった)、聖火の最終ランナーがかつての十種競技王者だったという話もあり、欧米では特に尊敬の対象となっていると思われる。もし将来日本でまた五輪を開催することがあれば、佐藤選手に聖火の最終点火ランナーになってもらってよいレベル。
2023/12/21
変化球をひとひねり
ChatGPTが一般リリースされてもうかなり経つ。そういえば昨年度の期末(今年の1月)に出てきた英語のレポートの中にやけにこなれた文章が幾つかあったが、もう使ってた学生がいたのか? その後、今年度に入ってからはあれこれ会議などでも話題になった。ただ、単純なコピペによる剽窃と違って、採点する方も色々困る。ChatGPTにもそれなりのクセがあり、適切な答えを出すのが苦手な問いの出し方に気づいたりもしたが、技術の進歩は速いので、そのうち手玉にとられることだろう。
この種のAIについてはすでに大量の観察・考察が出されている。基本線としては、文章作成の有力な支援ツールとして使えると思う。元々、従来の記号計算(形態素などの記号を規則に従って配列することで文を生成)とは違い、統計的によくある語の結合からなるチャンクを出力してくれるわけだから(たぶん)、自然な表現になるのは当然だ。これは非母語話者にとっては非常に有り難いことで、おおよそ言いたいことは言えるが、ネイティブらしくない表し方になってしまった場合など、よりスムーズな表現に直してもらえる。
ここで、変化球。これは「発信型」を指向する言語教育の終わりを意味するのではないか? つまり、外国語による発信はAIのおかげでほぼ達成されたんじゃ?ということである。日本の研究者が国際的な成果の発信が十分にできないのは言葉の壁があるせいだと言われることがあるが、その問題はほぼ解決されたように見える。ぎくしゃくした英文を、AIが達意の英文に直してくれるのだから。これで海外での研究発表のハードルが下がるはずだ。ついでに言えば、ボイスチェンジャーみたいに発音の修正をリアルタイムでするガジェットも技術的には実現可能だろうから、口頭発表だってハードルは下がるだろう(何ならボイスアバターもあり)。
思えば平成が始まり、日本中で大学の教育内容や制度が大きく変わる中、そしてバブルの余韻さめやらぬ中、「国際化」のためには文字テキストを読んで辞書を引き引き日本語訳するような「受信型」の言語学習はもう古い、 これからは「発信型」だ、という声が世間を満たしていた。その頃から、そして今でも、「発信型」は英語の教科書、参考書、あるいは大学のカリキュラム改革における顕著なバズワードである。そういえば単語帳や文法書まで「発信型」というラベルがついていたが、あれは何だったんだろう。
だがしかし、言語を学ぶ、それも「教師つき学習」の必要性がなくなるのか、と言えばそうではない。これからは「受信型」学習の復権の時代だ、と言いたい。これは逆張りなどでなく、言語理論からも、そして教育上の要請からもむしろ順当な考えである。自分としては本当は変化球のつもりはないが、まあ世間的にはそう見えるわな、ということで。
・ポイント1、生成系AIは「解釈」をもたない(と思われる)。行間も読まない。ChatGPTを少しいじった限りでは、比喩や皮肉などの「ズラし」は苦手なようである。人間界でも、優れたコミュニケーターとは弁舌爽やかに一方的に話す人間ではなく(これはむしろ機械の得意分野だ)、相手の話に耳を傾け、言外のニュアンスまで読み取った上で相手に合わせて言葉を発することができる人間だろう。解釈の仕方を実践的に指導することは言語教育の役割の一つである。
・ポイント2、正しさの判断は誰がするのか? 解釈あるいは深読みは何通りもの可能性がある。解釈のスキルはすぐに身につくものではない。言葉や状況から世界の「モデル」を作り、それに照らして「察し」(論理的正しさの保証がない推論)をすることは、多数の試行を通して身につくものだろう。
・ポイント3、高度なリテラシーを身につける。クリティカル・シンキングに必要なことは何だろうか。言葉の細かい襞に分け入り、微妙な差異を把握すること。論理的な整合性と共に、その時代の社会的通念との整合性を測ること。証拠の妥当性を仔細に検討すること。そして人間としての皮膚感覚で是非を直観すること。これらはある程度マニュアル化できても、結局はかなりの部分が「手作業」になる。昔懐かし「訓詁の学」は、エリート教育としてのクリティカル・シンキングでもあったのだ。
・ポイント4、知識の組み替えをする。解釈した内容を非言語的な情報(すなわち概念)まで一般化&抽象化したら、それを組み替えることを人はしばしば行う。要するに「発想」のステージである。そうした発想に刺激を与え、展開させること。ここでも意志と価値観をもった「他者」 が必要である。
あれこれ書いたが、「良き受信者、高度な受信者」を養成できるのは、今のところ人間だけである。そしてそうしたスキルの重要性は、過去の時代と比べて、いささかも減少していないはずである。AI支援による発信スキル向上と、教師の支援による広義の受信スキル向上がうまく組み合わされば、新時代のより高度で効果的な言語教育が生まれると思うのだが、どうだろう。






