Keio SFC研究会A

研究会A 言語科学:基礎からオリジナル研究へ(月曜2・3限)

ようこそ、言語科学の研究会へ!
  • 授業の進め方など事務的な連絡は、授業内の他に、研究会のML、および授業システムからのアナウンスでお知らせするので、見逃さないように気をつけてください。
  • 言語研究の参考となるような情報は、随時Tidbitsタグをつけてここのサイトに公開していきます。また、認知言語学関連のメタリンクも用意しました。
卒業プロジェクトに取り組んでいる人、これからテーマを探して深める人、それぞれだと思われるので、進度に合わせて授業時間を有効活用したいと思います。
 
2024年度について:今年度は原則として新規募集は行いません。特に希望がある場合は別途相談ください。(4/5/2024更新)
 
2023年度について:「語法・文法」をやります。各人が特定の語や構文について、調べて考察する予定です。「語彙意味論」・「認知言語論」の履修者を優先的に受け入れます。(12/14/2022更新)
  • 構文研究メモ」を公開しました。このメモで取り上げているようなことを研究会では行います。研究会に新規加入の際は、春学期で取り組む構文に当たりをつけておくとより楽しく研究できると思います。
  • 日本では優れた「語法研究」の伝統があります。今日私たちが非常に優れた、情報量の多い辞書が利用できるのも、英語参考書などで語法の細かい使い分けについて丁寧な解説がされるのも、この分野の先人のお陰です。その集大成が、『英語語法大辞典』第1-4集, 大修館書店。語学好きならぜひ現物を手にとってください。また、個人による語法研究の本もたくさん出ています。とりあえず、私の本棚にあるものをいくつか紹介。
 
柏野健次. 1993. 『意味論から見た語法』. 研究社.
田島松二 (編). 1995. 『コンピューター・コーパス利用による 現代英米語法研究』. 開文社.
田中廣明. 1998. 『語法と語用論の接点』. 開拓社.
八木克正. 1999. 『英語の文法と語法−−意味からのアプローチ』. 研究社
内木場努. 2004. 『「こだわり」の英語語法研究』. 開拓社.
 
図書館などで見て、語法研究の面白さにふれることを期待します。
  • 英語語法研究といえば、洞察の鋭さと用例の周到さにおいて最高位にあるのがこの一冊(残念ながら絶版だが図書館にはある)。
Bolinger, D. 1977. Meaning and Form. London: Longman (中右実 訳. 1981.『意味と形』こびあん書房) 
 
日本の辞書・語法研究者に信者は多く、私もその一人です。アメリカにいた時にBolinger氏からLanguage: The Loaded Weaponの扉にして頂いたサインは家宝となっています。
 




1)SFCのメディアセンターには、研究会の「指定図書」コーナーを作ってもらうようお願いしています。以下が本のリストです。以下、簡単なコメントをつけ、学会情報等も加えました(文中敬称略)。

【言語学全般の入門】
  • 郡司隆男・西垣内泰介(編)(2004)『ことばの科学ハンドブック』研究社
  • 佐久間淳一・町田健・加藤重広(2004)『言語学入門:これから始める人のための入門書』研究社
  • 大津由紀雄(編)(2009)『はじめて学ぶ言語学:ことばの世界をさぐる17章』ミネルヴァ書房
  • 斎藤純男(2010)『言語学入門』三省堂
  • 窪薗晴夫(編)(2019)『よくわかる言語学』ミネルヴァ書房
[比較的最近のもので、「標準的」な内容の入門書をいくつか。斎藤はカバーする話題が最も広い。郡司他は限られた話題をある程度詳しく解説している。大津は話題のバラエティと説明の詳しさのバランスがとれている。佐久間他もバランスがとれており、具体例も多彩。窪薗は他と異なり、見開き2ページで1つのトピックを簡潔に解説したもの。良書ではあるが、体系的に理解するためには、単独ではなく他の入門書と併せて読むことを推奨。]

【言語学全般の用語辞典】
  • 斎藤純男・田口善久・西村義樹(2015)『明解言語学辞典』三省堂
[「コンサイス」な用語辞典(三省堂だけに)。どんな学問分野でも、多くの術語を正確に知っていないと文献を読むことができないので、購入して随時参照することを推奨。この本でわからない時は、ネットで検索するもよし、図書館で他の用語辞典を見るもよし、あるいは授業で質問するもよし(<これ大事)。なお、寺澤芳雄(編)(2002)『英語学要語辞典』研究社、はより本格的な言語学の用語辞典。認知言語学については、赤松弥生と私の二人で全項目を執筆。用語選定の準備段階でのメモはこちら

【認知言語学の入門】
  • 西村義樹・野矢茂樹(2013)『言語学の教室』中央公論新社
  • 大堀壽夫(2002)『認知言語学』東京大学出版会
  • 籾山洋介(2014)『日本語研究のための認知言語学』研究社
  • 野村益寛(2014)『ファンダメンタル認知言語学』ひつじ書房
[西村・野矢は入門書というよりは対話形式の読み物。最初に手に取るとよいだろう。籾山、野村はどちらも比較的新しい、初級レベルの入門書。大堀は年代的にやや古いが、中級レベルの入門書で、初級よりは扱う範囲が広い点が特徴。入門レベルをクリアしたら、森雄一・高橋英光(編)(2013)『認知言語学:基礎から最前線へ』、高橋英光・野村益寛・森雄一(編)(2018)『認知言語学とは何か:あの先生に聞いてみよう』(どちらもくろしお出版)に進んで、それぞれの分野におけるより新しい進展を知ろう。]

【認知言語学の概観】
  • 池上嘉彦・河上誓作・山梨正明(監修)シリーズ認知言語学入門
  • 辻幸夫(編)(2003)『認知言語学への招待』シリーズ認知言語学入門1 大修館
  • 吉村公宏(編)(2003)『認知音韻・形態論』シリーズ認知言語学入門2 大修館
  • 西村義樹(編)(2018)『認知文法論1』シリーズ認知言語学入門3 大修館
  • 中村芳久(編)(2004)『認知文法論2』シリーズ認知言語学入門4 大修館
  • 松本曜(編)(2003)『認知意味論』シリーズ認知言語学入門5 大修館
  • 大堀壽夫(編)(2004)『認知コミュニケーション論』シリーズ認知言語学入門6 大修館
[認知言語学のそれぞれの下位分野を6冊かけてより詳しく解説したもの。年代的にはやや古いが、基礎固めとしては十分。認知言語学の中核となるのが意味論であることを思えば、一冊選ぶなら松本(編)『認知意味論』。この手のシリーズものは、他にも「認知言語学のフロンティア」(研究社)、「認知日本語学講座」(くろしお出版)、「認知言語学演習」(大修館)があるので、適宜参照。なお、第6巻の題名を「認知語用論」としなかったのは、私なりの矜恃である。]

【認知言語学の研究方法】
  • 中本敬子・李在鎬(編) (2011)『認知言語学研究の方法:内省・コーパス・実験』ひつじ書房
[研究のアイデアが出たら、具体的にどのような方法で取り組むかを考えることになる。本書はそのための参考になる。もちろん、これで万事解決ではないので、自分でさらに調べて考えてみよう。]

【認知言語学の用語辞典と包括的な事典】
  • 辻幸夫(編)(2013)『新編認知言語学キーワード事典』研究社
  • 辻幸夫他(編)(2019)『認知言語学大事典』朝倉書店
[上記の『明解言語学辞典』にも認知言語学の用語は取り上げられているが、『キーワード事典』は認知言語学に特化してかなり詳細に用語を解説している。『大事典』は用語の辞書的な解説でなく、認知言語学とその関連分野を網羅的にサーベイした論文集。「認知・機能言語学」を古賀裕章と私が執筆している。]

2)これまでの研究会の参加者から見るに、言語研究の中でも広い観点からのコミュニケーション研究に関心をもつ人が多いようです(語彙や文法の深く鋭く分け入った研究もぜひ見たいところですが)。言語学の中で対人的なコミュニケーションを扱う理論は語用論(pragmatics)の範疇になります。初歩の初歩としては上記リストにある『認知コミュニケーション論』の、私が書いた第1章がおすすめ。
  • 加藤重広・澤田淳(編)2020『はじめての語用論−−基礎から応用まで』 研究社
  • 加藤重広・滝浦真人(編)2016『語用論研究法ガイドブック』ひつじ書房
  • 小山亘. 2012『コミュニケーション論のまなざし』三元社
一つ目の本は本サイトのこのページで紹介あり。複数著者によるものですが、入門書としての統一がとれた良書です。二つ目の本はその先に進もうとするさいの、研究方法が解説されています。これもおすすめ。三つ目の本は言語人類学者による、題名通りコミュニケーションを広く扱った入門書。最初にこれを読んで(やや高度な内容も含まれるが、解説はわかりやすい)、コミュニケーション研究のおおよその姿をつかんでから、言語学的アプローチに入っていくのもよいでしょう。なお、コミュニケーション研究一般については、社会学やメディア研究寄りの入門書がたくさん出ています。「コミュニケーション論/学/スタディーズ」といったキーワードで検索すると色々見つかるでしょう。一つだけ紹介すると:
  • 大橋理枝・根橋玲子. 2019『コミュニケーション学入門』放送大学
この本に限らず、放送大学のテキストは予備知識の(ほとんど)ない受講生に、当該分野の基本知識と考え方を伝える良書が多い。書棚に置いてある書店が少ないのが惜しいところですが、公式ウェブページから探してみるとよいでしょう。ちなみに私の友人にはTVの放送大学講座を見るのを趣味の一つにしている人がいます。なるほど、この人物の知識量(と精度)が並外れているわけだ。
 
3)加えて、インターネットを利用して、言語コミュニケーションに関わる色々な学会のページから、最近の研究発表を見ることをおすすめします。全文掲載されているとは限りませんが、テーマ探しの助けになると思います。
他に、日本語や英語などの個別言語の学会もたくさんあります。英語だけでも英語学会、大学英語教育学会(JACET)、英語コーパス学会など。また、言語学プロパー以外では、ヘルスコミュニケーション学会、スポーツコミュニケーション協会、ビジネスコミュニケーション学会、産業・組織心理学会など、(何となく)SFC的な方向性をもった学会もあって、面白そうです。



4)研究計画の立て方やデータ分析の方法について解説した本も読んでおくとよいでしょう。上に挙げた中本敬子・李在鎬(編) (2011)『認知言語学研究の方法』の他にいくつか紹介します。藤村・滝沢は全般にわたる解説、坊農・高梨は会話の分析を中心にしたものです。Wray & Bloomerはテーマ探しから始めて(言語研究の各分野の紹介つき)、データ集めと分析、さらには研究の発表のまとめ方まで親切に解説しています。Litosselitiは言語研究のさまざまな方法論(質的、量的、聞き取り調査、コーパス分析、等)を紹介したものです。自分が使いたい方法について詳しく学ぶのに役立ちます。Hatch & Lazaratonは新版が出ていないのが残念ですが、基礎的な統計的分析の方法を広く扱っています。これも自分の目的に合った方法を解説した部分を選んで読むとよいです。
  • 藤村逸子・滝沢直宏 (編) (2011) 『言語研究の技法』. ひつじ書房.
  • 坊農真弓・高梨克也 (編) (2009) 『多人数インタラクションの分析方法』. オーム社.
  • Wray, A. & A. Bloomer (2012, 3rd ed.) Projects in Linguistics and Language Studies. London: Routledge.
  • Litosseliti, Lia (ed.) (2018, 2nd ed.) Research Methods in Linguistics. London: Bloomsbury. 
  • Hatch, E. & A. Lazaraton (1991) The Research Manual: Design and Statistics for Applied Linguistics. NY: Newbury House
この他、篠原和子・宇野良子(編)『実験言語学の深化』(2021)は実験方法そのものの解説ではありませんが、実験的方法による新しい研究成果の事例を見ることができます。



5)論文の書式について。さまざまな学会で「投稿規定」の一部として論文の書式=style sheetを決めているので、一つのスタイルに決めて、それに従うこと。例えば英語だと日本英語学会の投稿規定ページは詳しい規定があります(最下部にサンプルのpdfファイルあり)。海外ではAmerican Psychological AssociationやModern Language Associatonのstyle sheetがよく知られています。どちらも正式のガイドブックは有料ですが、ネット上では簡略化した紹介があるので各自で参照することをすすめます。日本語でも多くの学会が公式サイトにスタイルシートを載せています。自分で関心をもった研究がよく出てくる学会のスタイルシートを使うとよいでしょう。出版社の中には自社仕様のものを用意しているところがあります。ひつじ書房の執筆要項はその一つ。もちろん、卒業論文は表紙がついたり、大学固有の規定もあるので、それは各自で確認してください。
 

本研究会では、これまで次の卒業プロジェクトが提出されています。

2023年度
  • 身体を使ったイディオムと身体論の関係性について
  • 映画キャッチコピーにおける句読点使用の変化と背景考察
  • 在日外国人が漢字に興味を持つ理由を明らかにする
  • 言葉の力から見る『KEIO日本一』 
  • インスタグラム広告における「いいね」獲得方法
2022年度
  • 化粧品におけるカラーネーム考察〜認知言語学的視点から〜
  • SNS 言論が携帯業界の企業活動に与える社会的影響に関する分析
  • 多義語における意味拡張を理解することによる記憶定着への影響とそこから考える日本の英語教育
  • On the Multimodality of English [ADV and ADV] Construction: A Collostructional Approach[優秀卒業プロジェクト]
  • インターネットスラングの認知言語学的考察〜「親ガチャ」を例に〜
  • 日本語におけるコロナウイルスに対する戦争メタファー
2021年度
  • 『不思議の国のアリス』からみる翻訳の日英比較--オノマトペを中心に翻訳者が作品に与える影響について
  • 日本語を第二言語とする日本語使用者の口語特徴の考察
  • バナー広告におけるインプレッション効果を 促進する視覚情報と言語表現のシナジー効果
  • インスタグラムにおけるキャプションの影響力〜認知言語学的観点からインスタグラムを紐解く〜
  • 比喩表現における日米言語の比較
  • 本当に新型コロナウィルスは日本国内で終息を迎えるのか? 〜Twitter を用いたウィズコロナの動向分析〜
2020年度
  • 多義語のパラドックスに関する考察−認知言語学の視点から− [優秀卒業プロジェクト]
  • スポーツの場におけるミスコミュニケーションの分析
  • チームスポーツにおけるコミュニケーション−−複雑なミスの発生要因の分析と解消の考察−−
  • デザインプロセスにおける言葉の役割と創造性について
  • プロとアマチュア記者の記事にはどのような言語学的な違いがあるのか・良い記事にはどのような特徴があるのか
  • 現代版弁論術のすすめ−−人を説得するための技術−−
  • 言語学的観点から見た漫才のツッコミ
  • 動物キャラクターのステレオタイプと役割語を検証−−アニメーション映画「バケモノの子」を用いて−− 
  • 反復練習による、役者の演技の変化について
  • 漫画における感情表現の日・英翻訳比較研究
  • 歴代「角川短歌賞」受賞作にみる現代短歌と家族観

2019年度
  • SNSコミュニケーションによる引きこもりのストレス緩和について
  • イタリア映画の日本字幕における技法とコツとは
  • ノンバーバルコミュニケーションにおける「間」の感性情報心理学・周辺言語
  • 人が表情を読み取るとき、文字と音声情報はどのような影響を与えるのか
  • 認知言語学×スポーツ
  • 漫画『One Piece』におけるキャラクターを 生かす工夫と作品に与える影響(日英比較)
  • 名詞表現の語彙概念拡張に関する考察

2018年度
  • 人間が音楽構成と詞へ与える効果の分析−−ピンク・フロイドの軌跡と音楽−−